血の匂いがする。
ままならない呼吸全部が、血の匂いに染まっている。
「おい、鈴蘭! 聞こえるか!」
クリスタルのような声が、わたしを呼ぶ。
わたしの眼前で、金色のまなざしが真剣にきらめいている。
「チカラを使え。自分の傷を治せ」
そっか。わたし、傷を治せる。
でも、自分のはやったことないんです。
自分の傷は、痛みを移せないから。
肺が壊れた音をたてている。
苦しい苦しい苦しい。
血の匂いに溺れてしまう。
煥先輩にすがり付きたいのに、体が冷えて震えて、何もできない。
助けて。
煥先輩、助けて。
「オレを使え。オレの体に痛みを移せば、治せるはずだろ!」
やったことない。できるのかわからない。
でも、ちゃんと治るのなら。この苦痛が消えてくれるのなら。



