こぢんまりとした嫦娥公園の真ん中には、丸い池があって、その真ん中の小島に月の女神をまつる祠《ほこら》がある。
ツツジとコデマリが白い花をビッシリと咲かせている。
夜風はかすかに甘く香る。
外灯の下のベンチに、平井さんがいた。
平井さんはわたしたちの姿を認めて、穏やかに微笑んだ。
「こんばんは、安豊寺鈴蘭さん、伊呂波《いろは》煥くん。きみたちも呼び出されたんだね」
「平井さん、こんばんは。平井さんも、長江先輩たちに呼び出された側なんですか?」
ベンチの背後の薄闇が動いた。
グレーの詰襟にスリムなスタイル。海牙さんだ。
「ぼくたちが平井さんを呼び出しました。話をしたかったので」



