煥先輩はカッターシャツのボタンを上まで留めていない。
赤いネクタイは緩めてある。
ブレザーの前を開けている。
でも、動きやすさを重視しているからか、ズボンと靴の履き方はきちんとしている。
これくらいの緩さなら、長江先輩の服装だって大差ない。
なのに、印象はだいぶ違う。
長江先輩の場合、チャラく着崩しているという印象だ。
怖い不良という雰囲気は少しもない。
煥先輩に、好奇心と恐怖心の視線が遠慮なく刺さる。
煥先輩は誰とも視線を合わせずに、ただ前を向いている。
集団の中で自分の存在は異質だと、お嬢さま扱いのわたしも、体験してきたつもりだった。
甘かったんだ。
煥先輩の孤立感は、わたしが知っている程度のものではない。
煥先輩が唐突に足を止めた。
「あいつ」
道の反対側から長江先輩が歩いてきた。



