亜美先輩も文徳先輩と一緒に楽器店に行くらしい。
煥先輩が何ともいえない表情で無言の訴えを牛富先輩と雄先輩に送って、二人もこっちに来てくれることになった。
文徳先輩と亜美先輩が並んで歩いていく。
牛富先輩が苦笑いでつぶやいた。
「ひでぇやつだな、文徳は。いつも見せ付けやがって」
わたしは大柄な牛富先輩を見上げた。
いかつい体型だけれど、いつもニコニコしているから雰囲気が柔らかくて、つぶらな目はとても優しい。
「牛富先輩、彼女さんいるんですよね?」
「いるんだけど、大っぴらに会えない。緋炎《ひえん》に目を付けられたら危険だからな」
「雄先輩も同じ事情だって聞きました」
「そう、あいつも同じ。鈴蘭ちゃんも巻き込まれた側だから、おれらの気苦労や心配も肌で感じてるよな」