亜美先輩が大きく伸びをした。
「さーって。そろそろ練習再開しようかな。歌詞は読んでていいからね」
「はい」
「こらこら、あんたたち! ふざけるのも、ほどほどにしなよ? まったく、十年前と、やってること変わらないよね」
亜美先輩は牛富先輩と雄先輩の背中を叩いて、文徳先輩の脇腹を突いた。
煥先輩が文徳先輩の拘束から、やっと逃げ出す。
小夜子が真っ赤な頬を手のひらで覆った。
「どうしよう、鈴蘭。わたし、泣きそう。煥さんがカッコよくて切なくてかわいくて。胸がドキドキしすぎて、困る」
わかるよ。
と、わたしは言おうとした。
言えなかった。
わたしが煥先輩に惹かれてしまっては、いけない。