「寂しがってた。心のバランスが崩れて、自分のチカラを調整できなくて、友達にケガをさせちゃったんだ。しかも、あの髪と目の色でしょ?

悪魔って呼ばれて嫌われて、あいつはそれ以来、笑わなくなった。人に触れられるのもダメ。集団生活も無理」


「悪魔? 今でも煥先輩がそう呼ばれることがあるのって、そのころからのあだ名なんですか?」


「たぶんね。由来を知ってる人は、ほとんどいない。カッコいい称号だなんて言われてるけど、煥は微塵《みじん》もそう思ってないだろうね。

本来の煥は、ああじゃなかった。百八十度、変わっちゃったんだ」



瑪都流が瑪都流である理由がわかった気がした。


煥先輩の書く詞がヒリヒリ痛い理由も、文徳先輩と煥先輩の結び付きが強い理由も。



大切なんだ。


守りたいんだ。


そのために強くあろうと、それぞれが思っているんだ。