海牙さんが笑みを消した。


ゾッとするほど整った横顔に、空気が凍る。


長江先輩が、だらりと腕を垂らした。



「海ちゃんのそんな顔、初めて見たよ。付き合いが長いとは言えねぇけどさ」


「笑うなと言ったのはきみでしょう? ぼくだって、恐怖くらい感じますよ」



一瞬の出来事だった。



黒い刃が長江先輩の左胸に突き刺さった。


同時に、朱い刃が海牙さんののどを掻き切った。


海牙さんが二人を手に掛けて、玄獣珠と朱獣珠が悲鳴をあげる。



チカラが働く。


屋上の風景も、わたしという存在も、吹き飛ばされる。



巻き戻しが起こる。