煥先輩が眉をひそめた。
「あんたの運動能力、どうなってんだ?」
海牙さんは、ウェーブした髪を掻き上げた。
「運動能力そのものは普通程度ですよ。煥くんみたいに高いわけじゃない。ぼくは、体の使い方に無駄がないだけです」
「それがあんたの能力ってことか?」
「そういうことです。三次元空間における物理法則に従うすべての事象が、視界に数値化される。
『力学《フィジックス》』という能力です。数値をもとにトレーニングして、無駄を省く動きを身に付けました」
海牙さんの動きは一つひとつがなめらかで、指先まで洗練されている。
計算し尽された動きなんだ。



