襄陽学園はこの町の真ん中あたりにある。
町には大きな港があって、飛行機の空輸が発達するより前は、すごく栄えていた。
今でも、港には大型の貨物船がたくさん停泊している。
学園よりも港に近いエリアは繁華街。
反対側は住宅地で、だんだん上りになってる。
わたしの家は、住宅地の丘のいちばん上にある。
まわりにはお屋敷が並んでいて、我が家もご多分に漏れず、かなりの豪邸だ。
「行ってらっしゃいませ、鈴蘭お嬢さま」
「行ってきます」
門衛さんに挨拶して、坂道を歩き出す。
毎朝のこととはいえ、大袈裟なお見送りにはちょっと疲れてしまう。
わたし、たぶん本当はお嬢さまの器なんかじゃないんだ。



