わたしには今、好きな人がいる。
襄陽学園の二つ上の先輩だ。
去年の八月、襄陽学園のオープンキャンパスで、生徒代表としてステージに立ったのが先輩だった。
カッコいいと思った。
あの日から、恋はそっと始まっていた。
見つめるだけ、遠くから憧れるだけの相手だった。
それで終わるんだと思っていた。
でも、出会ってしまった。
生徒数の多い襄陽学園の広い校舎で、学年も違うのに、唐突に声をかけてもらった。
その瞬間の胸の高鳴りは、忘れられない。
初恋。運命。
思い出すだけでドキドキする。
胸がくすぐったくて、口元が笑ってしまう。
わたしは、ツルギの柄の姿をした青獣珠を抱きしめながら、胸に手を当てた。
「今日は会えるかな?」
昨日の晩は月がキレイで、思わずお願いしてしまった。
「明日は彼に会わせてください」って。



