亜美先輩はほんの数秒で、男二人を叩きのめした。 「口ほどにもない」 わたしは笑顔をつくってみせた。 こぼれそうな涙をごまかして上を向く。 夜空に月がある。 十四日のほぼ丸い月。 ポーチの中で青獣珠は沈黙している。 刺せ、と騒いだりしない。 前のときは確かに聞こえたのに。 ほとんど忘れていた夢の中の声を、鮮やかに思い起こすことができたのに。 あれはなぜだったんだろう? 誰に訊くこともできない。 月に尋ねてみたい。 ねえ、あなたですか? 強すぎる願いをわたしに思い出させたのは、月の光?