最初に、ぬくもりに気が付いた。 自分のものじゃない体と服の匂いがする。 力強い腕が、肩を抱いてくれている。 彼が、低く笑った。 「煥《あきら》のやつ、容赦がないな。一瞬で沈めやがった」 ブレザー越しに伝わってきた、笑いの振動。 わたしは顔を上げた。 文徳《ふみのり》先輩が、男くさい顔で笑っている。 路地だ。 バイクのヘッドライトがまぶしい。 煥先輩が怪訝《けげん》な顔をしている。 「これは……」 走ってくる足音がした。 煥先輩と反対側からだ。 文徳先輩が叫んだ。 「煥、飛び道具が!」