「亜美先輩は、文徳先輩と……」
「付き合ってるよ。っていう言い方も、今さらだな。許嫁(いいなずけ)のほうが正確かもね」
ガラガラと、心の壁が崩れていく。
崩れてくる。
大切に組み上げていくはずだったものが、ガラガラと。
そしてわたしは、尖った破片で生き埋めになる。
初恋だった。
運命だと思った。
輝く月に何度も願った。
月がこの恋を叶えてくれるはずだった。
見上げる夜空に月がある。
十四日の、ほぼ丸い月。わたしの願いの象徴。
なぜ?
亜美先輩がわたしに微笑みかける。
この人のことは憎くない。
でも、文徳先輩との関係は憎い。
あっ、と気付いた。
十五日の朝に見た夢の中で、血まみれで倒れていた花嫁の正体は亜美先輩だった。



