PRINCESS SWORD―姫のツルギは恋を貫く―



「うちの鹿山《かやま》家は、昔は伊呂波家の家臣だったんだってさ。牛富のとこも雄のとこも同じく、伊呂波の下っ端。

伊呂波は武家の統領の血筋で、近隣一帯にすごい影響力があったんだよ」


「そうなんですね。わたし、地域の歴史とか勢力関係とか、全然知らなくて」


「普通はそんなもんじゃない? 特に伊呂波家はもう……」



亜美先輩は言葉を切った。



「どうしたんですか?」


「あのね、文徳と煥、今は二人だけなんだ。あたしたちが小学生のころ、ご両親が亡くなった。

しばらくは親戚に育てられてて、文徳が高校に上がる年に親戚の家を出て、兄弟二人でこの近くのマンションに住んでる」



驚いた。


文徳先輩たちにそんな悲しい家庭事情があるなんて。