四獣珠は、人の願いを叶える奇跡の存在だ。
世間に大っぴらにすることは望ましくない。
人はチカラを求めて争う生き物だ。
四獣珠の預かり手がお互いを知らないのも、チカラを一ヶ所に集めてはならないからだという。
けれど、わたしは白虎の伊呂波と知り合ってしまった。
これはただの偶然なのか。
あるいは、何かの異変が起こる前触れなのか。
怖いことなんか考えたくないのに、わたしの脳裏には、時間が巻き戻ったときの混乱がありありと思い出された。
この手で人を差した、壮絶な感触も。
「鈴蘭? どうかした?」
「あっ、な、何でもないです。あの、亜美先輩のおうちは、昔から伊呂波家とつながりが深かったんですよね?」



