突き放された。
気にしていないとか慣れているとか言っても、煥先輩はやっぱり、わたしのことを受け入れたり許したりするつもりはないんだ。
「わたし、余計なことしたんでしょうか?」
「余計なこととは言ってない。兄貴の指は、瑪都流《バァトル》の音の要だ。治らなかったら、ライヴができない。兄貴はホッとしてた。傷、跡形もなく消えてたから」
文徳先輩に喜んでもらえたなら、それでいい。
煥先輩がわたしをうとましく思っているとしても。
「ライヴに支障が出なくてよかったです」
煥先輩はうなずいて背を向けて、取って付けたように言った。
「傷を治しながら、あんた、つらそうだった。痛みは苦手なんだろ? 無理すんな」
澄んだささやき声がわたしの胸を貫いた。
その言葉は、優しさ? それとも、ただの皮肉?



