煥先輩はうんざり顔でうなずいて、行くぞ、とわたしに一言。
わたしは慌てて足を交わす。
行ってらっしゃいませ、と門衛さんたちの声。
わたしが追い付くと、煥先輩にカバンを奪われた。
「持ってやるから、さっさと歩け」
「……歩くの遅くて、すみませんね」
「中身の詰まったカバンだな」
「置き勉しないのがルールでしょう?」
「んな校則、どこにもねぇよ」
「え?」
「ただの慣習だって、兄貴が言ってた。兄貴も置き勉してるぞ」
あまりに無愛想な言い方に、カチンときた。
だいたい、文徳《ふみのり》先輩が自分でそれを言うならともかく、煥先輩に言われても気分が悪い。