私は自分の部屋の窓を開けてベランダを乗り越え、瑞希ちゃんの部屋の窓をたたいた。
「瑞希ちゃんおかえり…入ってもいい?」
少し間をあけて、瑞希ちゃんが口を開いた。
「…今はゆめと話せる気分じゃない」
「わかってるよ。見たらわかるよ。何年一緒にいると思ってるの」
瑞希ちゃんは下を向いたままで、返事が返ってこない。
「玲さんとなんかあったんでしょ。喧嘩でもしたの?」
返事がない。
「入るね」
窓を開けて部屋に入る。
でも瑞希ちゃんは私のほうを見ようとはしなかった。
「何があったの」
私は瑞希ちゃんの目の前に立って、静かに問いかける。
「べつに何も」
「嘘」
「何もないって言ってるだろ」
「何もないなら何でそんな顔してるの」
「ゆめには関係ない」
冷たい言葉だった。
わかってるよ。わかってるけどさ。
「関係ないよ。関係ないけど、心配じゃん。瑞希ちゃんは昔から考えすぎちゃうタイプだから」
そう言うと少し沈黙が続き、瑞希ちゃんは顔を上げた。
「玲が俺に隠れて元カレと会ってたんだ。だから何でか問いつめたら、俺には関係ないって言われた」
「なにか事情があったんじゃないの」
「事情ってなんだよ。どんな事情があって別れた元カレに会うって言うんだよ」
結構嫉妬深いんだね、瑞希ちゃんは。
私が彼女なら、絶対瑞希ちゃんにそんな思いさせないのに。
「玲さんのこと、信じられなくなった?」
「それは…」
瑞希ちゃんは戸惑いの表情を見せた。
それを見て私の中で、何かが弾ける音がした。



