「瑞希まだ起きてないの…って、ゆめちゃん来てたの」

「おばさん、おはようございます」

ドアが開くと、瑞希ちゃんのお母さんが私を見て微笑んだ。

「いつもごめんね。瑞希ったら、もう21歳なのにだらしないったら」


「私の日課ですからいいんです」


「そう?あ、そういえば瑞希、"玲ちゃん"もう玄関で待ってるわよ」

「え、玲もうきてるの?」

「あんたが起きるの遅いからよ」

「すぐ着替えるからもうちょっと待ってって言っといて!」

「全くしょうがない子ね。ねえゆめちゃん朝食食べてく?瑞希どうせ食べないし」


「もちろんです。食べます!」


"玲"さんは、瑞希ちゃんの彼女。
大学の同級生らしい。


私も何度か見たことがある。


ウェーブがかかった暗めの茶色で、
胸のあたりまである長い髪。


身長は160センチもなく、
花柄のワンピースが似合う
いかにも女の子らしい人だった。


私とは正反対。


「ゆめ、俺いくから遅刻すんなよ」

「わかってるよ。いってらっしゃい」


瑞希ちゃんの部屋は、瑞希ちゃんのにおいがする。


当たり前だけど、このにおいが好きだった。


「瑞希ちゃん、ふとんがくしゃくしゃのままだよ…もう」