『・・・悪いっっ!ちょっとマドンナが心配で(笑)』
小窓から顔を出したまま、私と《入江クン》を交互に見て、そして・・・・
『心配いらねーな(笑)』
って。
わざと大きな足音を立ててその場を立ち去った。
《入江クン》は、小窓を凝視して、とても低い声で
『・・・・アイツ・・許さねー』
ってつぶやいた。
『・・・ゴメンっ!アイツ悪い奴じゃないんだけど、後でシバくから。で・・・・何話してた?あ、そうそう』
またボール籠に座り直して私を見つめる。
瞬きもせずに・・・
『だから・・・・俺を知って欲しい』
こんな人、初めてだ。
これまで告白は何回かされてきた。
でも、どの人も自分の気持ちの押し付けでしかなくて。
「好きだから付き合って」
告白されるのは好きじゃない。傲慢と言われてもいい。
私は、《私》を見て欲しい・・・
彼も、立花くんもそうだった。
結局は私の外見しか見ていなかった。
お飾りでしかなかった。
それでも、私には初恋だった・・・
『私・・・・』
頭の中で過去の私が今の私を引き止める。
私の言葉の邪魔をする。
すぐに言葉が出てこない私の顔を、《入江クン》は優しい笑顔で見つめている。
『・・・・ん?』
私の顔を覗き込む彼の笑顔が優しすぎる。
『・・・ゴメンな、って、俺謝ってばっかだな(笑)』
『・・・・・』
『困らせるつもり、ないんだけど。でも、俺、もっとお前のこと知りたいんだ』
『私・・・・』
『お前はそのままでいいよっ』
《にっ》と笑う入江クン。
『俺がそうしたいからする。で、そんな俺を見て少しずつ俺って人間を理解してくれたら・・・・えっ、あ、どした?俺、変なコト言った・・・?泣くなよ・・・』
私も《入江クン》を知りたいと思った。
そう思ったらこみ上げてくる涙・・・。
『・・・こういうとき、男はどうすればいい?』
切なそうに私を見つめる瞳は相変わらず私を捉えて離さない
『・・・・・』
私にゆっくり近づく。
ベンチに座っている私の前で両膝をつく。
逞しい腕がまるで壊れ物を扱うように優しく私の背中に回されて、
そして、
私の視界が彼のシャツで一瞬白くなって、それから・・・彼の匂いに包まれる・・・・
『・・・・ゴメンな、俺、どうしていいかわかんねえ・・・・』
『・・・・』
頭上から降ってくる優しい声に
彼の匂いに
身動きが出来ない
息が苦しくなる
お互いの鼓動が少し早いリズムを刻んで
心地良い安心感・・・
無意識にまぶたを閉じて、彼に身を委ねている自分がいた・・・・
どれくらいそうしていただろう・・・
外から北野君らしき人の声がして、私は慌てて彼の胸から身体を離す
『・・・ごめっ『ゴメンっ』
言葉を発したのは2人同時だった。
彼は私の前に立ち、少し恥ずかしそうに顔を背けてる。
私は・・・自分が彼からすぐに離れなかった事に驚いていた。
いつの間にか私の涙も乾いている。
でも・・
『お前今日、ずっと泣いてるだろ』
俯きながら、独り言のようにつぶやく彼。
『目、腫れてる・・・・俺の、せい?』
『・・・・!?・・・・』
『俺お前の笑ってる顔が見たい』
『・・・・』
ガチャっと部室のドアが思いっきり開いて、目の前には北野君。
『イチャイチャすんのもそれくらいにして、キャプテン、そろそろ出てきてもらってもい~っすか(笑)』
『・・・・ってめ!・・・ま、いっか』
彼は視線を私に戻して
『送ってく』
一言。
『・・・・ゴメン・・1人で帰れる』
私は、ゆっくり立ち上がってスカートの埃を払ってから部室を後にする。
そして足の痛みも感じないことに気づいたんだ。

