今日もテスト前だからもちろん部活はない。
昨日、美穂と帰る事が叶わなかったから、今日は一緒に、と約束をした。
でも、美穂は「もし、北野君に誘われたらその時はゴメンねっ」なんて言っていたけど。
その《お誘い》は今日は無かった。
日直だった美穂が日誌を職員室に届けに行ってる間、駐輪場で待つ事にする。
『・・ぃ・・さむいっ』
12月の冷たい風は、遠慮なく私に体当たりしてくる。
カイロも、手袋も意味を成していないくらいに冷たい空気が突き刺さる。
こんな事なら教室で待ってれば良かったな・・・
『彩先輩っ』
呼ばれて振り返るとそこにはこないだ私に不思議な言葉を投げかけて去っていった男の子。
委員会が一緒だと言われてから何度か顔を合わせているから顔は覚えた。
でもまだ名前がわからない・・・・
この能力に関してはもう少しリハビリが必要みたい。
『え~っと、・・・』
私が困っている様子を察して
『俺、立花翼です。彩先輩』
ニコッと笑う、た・・ちば・・な・・くん?
『・・・・・』
言葉を失って呆然としている私に「たちばなくん」は
『・・・立花翔の弟の翼です。先輩』
『・・・・あぁ・・・』
そう言えば、少し雰囲気似てるかも。笑うとなくなる目、とか・・・
『昨日兄貴と会ったんですよね?兄貴から聞きました』
『・・・うん、会ったよ?で弟が南校にいるって言ってた』
『俺、兄貴の部屋に飾られてた彩先輩の写真で一目惚れして。中学でも何度か会ってるんですけど、やっぱ覚えてもらえて無かったですね。』
『・・・ゴメンね…』
『いや、いいんです。今こうして覚えて貰えたら(笑)』
なんてかわいい事を言うんだろ。不覚にも年下に少しだけキュンとしちゃった。
やっぱりどこか似てるから?