他愛のない話をしながら歩いていると、横断歩道手前で突然島田の足が止まった。
『ん?どうした?』
横断歩道の先、一点を見つめて固まってる。
『・・・島田?』
俺が呼んでも島田は視線を外さない。
『・・・・た、ちば、な、くん・・・』
恐らく真向かいで信号待ちをしているヤツの名前なんだろう
『・・・大丈夫か?』
声をかけるけど島田の耳には届いていない。
信号が青に変わって前から歩いてくる、2人。
俺と島田は立ち尽くしたままで。
一歩二歩とこっちに近づき、横断歩道を渡りきる寸前、男の方がこっちを見た。
驚いた顔で。
『・・・彩・・・』
・・・・ビンゴ・・・
『え、あ、・・・彩?』
女の方も島田を知ってるみたいだ。
明らかに動揺している2人を見て、島田に視線を送る。
島田は唇を噛み締め、スカートの裾を握りしめていた。
『・・・あ、ひさ、ひさしぶり、だね・・』
視線を落としたまま、精一杯の声を絞り出す島田。
多分コイツらが2年前島田を苦しめた2人。
俺の怒りがフツフツと湧き上がる。
やっと笑えるようになったのに。
またコイツらのせいで島田が逆戻りするかもと思うと怖かった。