食堂からの帰り、職員室に用事があるからと美穂と別れた。


結局用事は5限目のプリントの準備。


ま、事務作業嫌いじゃないからいいんだけど・・・


さっさと用事を済ませて、職員室からの帰り道。



『島田先輩!』



男子の声。


私に男子の知り合いは・・・ほぼいない。


振り返って私を引き止めた男子を見る。私を先輩と呼ぶからには年下。


『だれ?』



『あ~、やっぱり俺、忘れられてますよね?』


全く思い出せない。

今の私は必要以上に他人の情報をインプットしないようになってる。


『前、体育の時間にサッカーボールを拾ってもらったんですよ。ま、全然違うとこに蹴られましたけど(笑)』


『・・・?・・あ、・・・・思い出した・・・』


サッカーが難しいということを初めて知った日だ。


『思い出してくれました?』


可愛い顔の年下君。


『島田先輩って、年下ありですか?・・ま、なくても俺諦めませんけど(笑)』


『・・・・・?』


『本当に鈍いですよね、先輩。そんな感じじゃ俺と委員会一緒っていうのも知らないでしょ?』


『・・・・委員会?』


『そ、委員会。でも俺もっと前から先輩のこと知ってます。今は言いませんけど(笑)』


『・・・・・』


『じゃ、俺行きます!』


『・・・・・?』


不思議な事をたくさん投げかけて去っていった年下君。


私を前から知ってる?


サッカーボールを蹴った日以前・・・


委員会には確かに男子もいる。


でも顔や名前は全く一致しない・・・


『・・・誰だったっけ?・・・』



考えながら歩いていると


・・・背中に鋭い視線を感じて振り返る。


そこには私を通り越してその先を見つめている彼。


『誰アレ。』


とてつもなくぶっきらぼうに。


いつもの笑顔も全く・・・・ない。


『・・・名前はわかんない。でも体育の時間に私がボールを拾ってあげた男の子』


『あ~、あの時のアイツか・・』


『知ってるの?』


『ふんっ、知らねー』


そっぽを向いて歩き出した。


彼はとてもぶっきらぼう。


必要以上のことは話さない。


でも、最近彼の仕草や視線で彼の考えが何となくわかるようになってきている私がいる。


本人には言わないけど(笑)


そんな事を考えながら教室に向かう廊下で
クルッと振り返った彼。


私の方に戻ってきて


『・・・・・ムカつく』


一言・・・



『な、何?いきなり』



俯き加減で私を見て、そして



『・・・・俺、坂本の意見にさんせー』



『・・・・・?』



『じゃな』



手をヒラヒラ~っとさせて私の数歩前を歩く彼。



美穂に賛成?


何の事?