隣に立ってたあたしが代わりに抱っこしてあげたくなるくらい、その様子は見てて歯がゆかった。


思わず何かで機嫌をとってあげられないかと考える。



あっ、そうだ…。



あたしはカバンをゴソゴソあさると、手編みのマスコット付きのキーケースを取り出した。


イルカとうさぎ、そしてひよこの三匹がぶらさがってる。



「ほらほら、ここにイルカさんがいるよ!」



あたしがブラブラとマスコットを揺らしながら声をかけたら、女の子は興味を持ったのか、ぐずるのをピタッとやめてこちらを向いた。



「あ、いるかさん…」


「こんにちは〜!ぼくイルカさん!

わたしうさぎさんよー!ピヨピヨ、わたしひよこさん!」



こうなったら、と役になりきってマスコットを動かすと、女の子は嬉しそうに笑ってくれる。



「わぁぁ〜!うさぎさんもいる〜!

ひよこさんも!!」



おかげでなんとか機嫌を取り戻して、次の駅までの時間やり過ごすことができた。


あたしも内心ホッ…。



すると奥に立ってたお母さんが、申し訳なさそうにお礼を言ってくれた。



「ありがとうございます。助かります。

よかったね、お姉ちゃん遊んでくれたね」