だから、

「う、うん……」

 と、あたしはあいまいにうなずいた。

 でも、確かに不思議と言われれば不思議だなぁ。

 だってお兄ちゃんは、もともとお話を作るのも描くのもめちゃくちゃ早くて、いつも担当の編集さんに褒められている。

 それも、締め切りの数日前にはきっちり仕上げるみたいで、苦しんでいるところなんか見たことがない。

 基本的に、なにごとにも超余裕のお兄ちゃん。

 そのお兄ちゃんが、スランプとか、修羅場なんて珍しい。

 うん、本当に珍しいのだけど……。

「だから、結愛。
おまえに、俺の代わりを頼む」

 ……って!?

 はぁぁぁぁああああ!?

 なに言っちゃってんの!? お兄ちゃんっ!!

「ちょっと待って!」

 なにをどう考えたら、そんな突拍子もない発言が出てくるの!?

 呆れてぽかんと口を開け、お兄ちゃんに向かって手を伸ばしたまま、数秒固まる。