「もしもし、沙衣?」



今日は当直で帰れないので、夕方時間を見つけて家に電話をかけた。

朝の様子からして、だいぶダウンしているはずだ。



「ん…タケル?」



寝ていたのか、声が寝ぼけている。

起こしてしまったことを少し申し訳なく思いながらも、仕方ないと自分に言い聞かせた。



「どう、調子は」



「どう、って。いつも通りだよ」



サラッと言えばいいかと思ったが、とことん言いたくないらしい。

家に居られない身としては、正直に言って欲しいところだ。



「薬切れてるんでしょ」



「え、なんで」



なんで知ってるの、と続けたかったのだろうが、途中で気付いたのか言葉を切った。

こっちは医者だっていうのに、気付かないと思っている方が不思議だ。