桜下に見、往々にして炎舞

「どうだ」

 救急車が到着し、救助を救急隊員に任せたベリルが泉に窺う。

「カクテルだな」

「ほう?」

 つまりはメタノールを使った爆弾か。

 日本では、戦前から戦後しばらくはメタノールを含む変性アルコールを用いた「爆弾」と呼ばれる酒が売られていた。

 メタノールには毒性があり、致死量には個人差がある。

 摂取すると中毒で失明や命の危険があったことからそう呼ばれていたのだが、揮発性が高く注意しなければならない危険物の一種だ。

 爆発するシロモノだとは言っても、爆弾にするにはいささかの苦労がある。

「それを差し置いてもメタノールでやりたかったんだろうさ」

 悔しげに舌打ちした。

 多少の落ち着きを取り戻した爆発現場に緊張を解き、立ち上がる。