「何のことだ」

「てめえ。堂々とすっとぼけやがるか」

「間違いでもないだろう」

「ああそうだな。仮の名だがな」

 これまでの諸々の怒りをぶつけるように迫っていく。

 近づけば近づくほどに、見上げる瞳の神秘性に強く締め付けられる。

 油断すれば引き込まれる──そんな危険をはらんだ瞳だ。

「ベリル・レジデント」

 噛みしめるように、ゆっくりと青年の名を紡いだ。

 ようやくたどり着けた喜びと安堵感に抱きしめたくなるが、以前の返しを思い起こして手が泳ぐ。

 ベリルは、よく突き止めたと感心するように泉を見やった。

 コニーたちの中に、あの特徴で誰だかピンときた奴がいたおかげだ。

 しかし泉の瞳は、ついに見つけた安堵だけでなく、複雑な表情を浮かべていた。