桜下に見、往々にして炎舞

「なんだてめえ!?」

「うおっと」

 奥の部屋から出てきた男は、知らない人間がいる事に驚いて腰の後ろからハンドガンを抜き引鉄(ひきがね)を立て続けに絞る。

 その動きに、泉は素早くテーブルにかがみ込んだ。

「落ち着けよ」

「うるせえ! 俺は捕まらないぞ」

 震えた声を張り上げる。

 まあそりゃそうだ。

 そうでなきゃこんな事はしないだろうなと腕時計を一瞥した。

 ブランドンには連絡したが、見つかったのが早すぎた。

 ここに着くのにはまだ数分はかかる。

「くそ!」

 撃ち尽くしたのか、男は弾切れのハンドガンを泉に投げつけて奥の部屋に駆け込む。

 まずい、窓から逃げる気だ。