桜下に見、往々にして炎舞

 しかしながら優秀なのは間違いないらしく、寄せられる依頼には不足していない。

 タイダルベイスンには、仕事に関係する事柄でアメリカに来たついでに寄っただけだ。

 日本から贈られた桜は、どこで見ても美しいと思える。

 横暴な性格の泉でもそれくらいの感性は持ち合わせている。

 この場所でこれといった目的がある訳でもなくぶらついていると突然、泉の視界を突風が遮った。

 煩わしく目を眇め、開けた視界に現れた一つの影に強烈に惹きつけられる。

 桜の花びらの舞うなか、柔らかな金のショートヘアが揺れる──青年だろうか、恐ろしく整った顔立ちは中性的でその瞳は印象深く、まるでエメラルドのように輝いていた。

 十メートルほどの距離にいる青年は二十代半ばだと窺える。

 自分と比べると小柄のようにも思えたが、体格は細めに見えて鍛えていることが半袖から伸びる腕に確認される。

 明らかに日本人ではない容姿なれど、なんと桜が似合うのか。

 否、あの風貌ならば似合うのは桜だけではないだろう。