桜下に見、往々にして炎舞

 さして気にも留めずそれらを一瞥した泉の数メートル先で一台のパトカーがおもむろに止まる。

 後部座席から出てきた男がこちらに走ってくるのをいぶかしげに眺めていると、徐々に誰だか確認したその姿に眉間のしわが深く刻まれた。

「ブランドンか」

「イ、イズミ! グッドタイミング!」

「あん?」

 サンドカラーのロングコートに大きな腹を抱えた四十代ほどの男がドシドシと駆け寄る。

 ほんの十数メートルの距離で息切れしているのだろうか、鼻息が荒い。

「来てくれ」

「なんだよ」

「説明は中でする」

 面倒だと渋る様子に早く乗れとせっつかれ仕方なく乗り込む。

 よほど急いでいるのか、全員が乗ったことを確認する時間も惜しいとばかりにいきなりアクセル全開で発進する。