桜下に見、往々にして炎舞

 ドルフには引き続きの捜索を要請し通話を切った泉は小さく唸った。

「それほど有名な奴じゃないのか?」

 しかしあれほどの容姿ならば、ある程度の名は知れ渡っていてもおかしくはない。

 かなり経験を積んでいると見た手前、まったくの無名だとは信じがたい。

 ドルフの社には諜報機関のリストも保管されている。

 そのなかで見つからないのであれば、新兵かフリーの傭兵か……。

 かすりもしないというのはどうにも気分がよろしくない。

 予想を一つ挙げるならば──

「ガセを掴まされた」

 あり得る、こうもしっくり来るものはない、これ以上ないってくらいに納得できる。

「あんのやろう~」

 ハンドルにつっぷし、肩を震わせる。

 二度あることは三度ある、必ず再会してやると決意を胸に車を走らせた。