桜下に見、往々にして炎舞

「そろそろ見回りに来る頃か」

「ちょっ!? 待てよ。俺の取り分は──」

 ぼそりと発して立ち上がる青年に、腹部の痛みをこらえて上半身を起き上げる。

 ここまで来て何もないじゃ大赤字じゃねえか。

「押収に来るまでには時間がある。それまでに幾つか見繕うと良い」

 慌てる泉に振り返り、マスクを装着して遠ざかっていく。

 犯罪者を引き渡すのは山の麓(ふもと)で、引き渡したのちに警察が武器を押収に来ると聞き、泉は安心して身体を休めた。

 とはいえ、出来るだけ武器を確保したい。

 休憩もそこそこにシートを仕舞い、腹部に残る痛みに小さく呻いて立ち上がる。

 炭坑の入り口に来てみれば、

「──なんてこった」

 置いてあった車がなくなっている。