「気がついたときには足が出ていた」

 よく通る声が泉の耳を心地よく刺激する。

 よもや同じ世界の人間だったのかと驚きつつも、すぐさまその腕を掴んで引き寄せていた。

 何もかもが上品に映るなかにある泥臭さは、それだけ戦いの経験を積んできたものに他ならない。

 ますます気に入った。

「悪いと思うならしっかり介抱してもらおうか」

 耳元で息がかかるようにささやく。

 ところが泉の予想とは異なり、青年はあまり表情を崩すことなく臀部に添えられた右手を一瞥して、

「なるほど」と口の中でつぶやきその腹を肘で強く押さえた。

「ぐお!? いってぇ!?」

 突然の激痛に手を離し腹を抱える。

 思っていたよりもダメージは大きいらしい。

 攻撃のパワーを少しも軽減出来なかった自分の不甲斐なさに泣きたい気分だ。