よくよく見ればこれは俺が持ってきたシートじゃねえかと、ちゃっかりしている相手に半ば感心した。

 薄暗かった炭坑内で感じた印象よりも細身で小柄だ。

 この体格でよくもやってくれた。

 それにしてもと泉は、その緑の目に妙な感覚を覚えた。

 どこかで見た気がするけれど、柔らかな金のショートに見覚えもなければ声も聞いたことがない。

 ただ、その瞳だけは魔力を秘めた宝石のように強烈な印象を放っていた。

「すまなかったな」

「あんた──っ」

 マスクを外した男の顔に目を見開く。

 それは紛れもなく、一度たりとも忘れたことのないタイダルベイスンで取り逃がした獲物だ。

 こうして間近で見ると、恐ろしいほどの存在感と優美さに思わず喉が鳴る。