桜下に見、往々にして炎舞

 叔父が敵視されてしまう事に申し訳なさを感じたものの、叔父もそうしておけと恭一郎をたしなめた。

 叔父は優しい人で、余計な争いを好まなかった。

 母親が懸念するような関係にもなった事がないし、叔父の友人たちは色んな国の出身者で恭一郎に色々な事を教えてくれた。

 英語やフランス語なども彼らから学んだ。

 叔父たちは彼を可愛がり、決して過(あやま)った道に進ませようとはしなかった。

 もちろん、世間には良い人間ばかりじゃない、油断はするなとも教わった。

 ヒステリックに叔父を罵倒する母親を見て彼が女嫌いになった事は皮肉でしかない。

 彼の性質にとどめを刺したのは誰でもなく母親だ。

 つまらない事を思い出したと舌打ちし、目が慣れた頃だとペンライトを仕舞う。

 そのとき、目の前を影が横切った。