「いまのお前ならばそういられる」

 だとするならば、考えられることは一つ。

 サヴィニオという存在は、お前にとって越えなければならない壁でもあった。

「勝ったかね?」

 皮肉ともとれる問いかけに悔しさは否めない。

 しかし、正直あいつに勝ったとは思えない。

 そんな泉の表情にベリルは少しの笑みを口元に浮かべた。

「そう思えるのならお前は問題ない」

 これからも良い動きが出来るだろう。

「あんた、何者だ」

 タイダルベイスンで初めて目にしたときから、泉はずっと考えていた。

 目を見張る存在感でいて、どこか消え入りそうな雰囲気をまとっている。

 目の前にいる今でも、ふいに消えてしまうのではないかとさえ思えた。