桜下に見、往々にして炎舞

 叔父は旅行先から帰ってきたとき、この財布を使っている恭一郎を見たかったのだろう。

 わざわざ先に送るところが叔父らしい。

 これまで、多くの事を伝えずにいた。

 目の前で幾度も死を見てきたはずなのに、叔父だけはそんな枠から外れていると思っていた。

 伝えられる時間はあまりにも少ないのだと、やはり手遅れになってから痛感するものだった。

「ばかやろう。死にやがって」

 長財布を握りしめ、背中を丸めて悔しげにつぶやいた。

 ──抱えきれない感情に押しつぶされそうになりながらも、どうにかこうにか生きてきたがそろそろなんとかしたい。

 それもこれも、あいつがまだ活動を続けているからだと苦々しく舌打ちする。

 そしてふと、ベリルに目を移した。