桜下に見、往々にして炎舞

「このまま西へ」

「あん?」

 言われたとおりに車を向ける。

 そういえば民間の空港があった。

「化けたな」

 ベリルはそれにさしたる反応を示さず、泉が持ってきたバッグをシートに乗せて中身を確認する。

「着替えないのか?」

「飛んでからだ」

 なるほど、あの監視だけで済ませているはずがないということか。それならと泉も変装を解くのを止めた。

 サヴィニオの先を読まなければ奴には勝てない。

 ベリルはというと、ジャンパーを羽織りそれまでの上品さを消し去って強気な女といった風貌に変わる。

 目指す空港は州の境界線付近にあり、ここまで来ると街の明かりも遠くかすんで見える。

 さすがに民間だけあって飛行場全体が公共用のものより狭く感じられた。