桜下に見、往々にして炎舞

 かなりの美女ではある。

 しかし、泉にとってはどんな容姿だろうが等しく女であることに代わりはない。

「早く出せ」

「てめえ、何言って──」

 言いかけて、聞き知った声にようやく気がついた。

 形の良い唇に薄くひいたルージュと青い目、胸に視線を降ろすと──無い。

 ブラジャーすらしていない。

 なのに、なんだって胸があると思い込んだのか。

「いいから出せ」

 目を丸くしている泉に顔をしかめて急かす。

「マジかよ」

 ナチュラルメイクよりも軽い化粧でどうしてここまで化けられるのか。

 確かに、間近にいてもすぐには気がつかなかった。

 青いカラーコンタクトはまるでフィルターのように、ベリルの存在感を少しだけ和らげている。