監視の目を上手く抜けたかどうかは解らないが、泉はひとまずベリルのいるホテルに向かう。

 それなりにセキュリティもしっかりしたホテルらしく、監視している奴らはホテルのロビーに居座ることは出来ないそうだ。

 ガラス張りのドアがずらりと並び、一定間隔で数人のドアマンが客を迎えるために背筋良く立っている。

 その服装と立ち居振る舞いはなるほど、不審な人間を見逃しそうにはない。

 敷地は広めで監視するには離れた場所からになり、奴らには厄介なホテルだと言える。

 とはいえ、本当に大丈夫なのかと思いつつホテルからやや離れた場所に車を止めた。

 よくよく考えると、カーティスの言うように間近でも解らない変装なら、どうやってベリルを確認すればいいのだろうか。

 若干の不安が湧き上がりふと、バックポケットのスマートフォンが着信を振動で伝えていた。