──夜、大型の黒い四輪駆動車がモーテルに入ってきた。

 それは泉のジープの隣に駐まり、眼鏡をかけた男が車から降りて前にある部屋に入る。

 テレビを見ていた泉の耳にもそれは確認され、そのまま聞き入っているとモーテルの管理人とのやり取りが続いた。

 それも終わり、管理人が部屋から出て行く音がしたあと、壁にあるドアがノックされる。

 泉は立ち上がり、気配を探りながらノブを回した。

「やあ。キョウイチロウ イズミ?」

 やけに軽そうな男が笑顔で立っていた。

 泉はそれに若干、怪訝な表情を浮かべる。

 身長は泉より五センチほど高いだろうか。

 ブラウンの髪は柔らかめで肩まであり、青い目は無邪気に丸くその風貌は実年齢よりも若く見えているかもしれない。

 同じ歳かやや上と思われる男は、その軽快な足取りに陽気な人物だと窺えた。