「しかし、誰がそんなことをする」

 大半の者は家族のためにと、金を貰う約束のもとに実行している。

 そこにはただ貧困があるだけで、揺るぎない思想などは存在しない。

 サヴィニオがそんな大金を払うとは思えない。

「志願者などいなくても成り立つのだよ」

「手当たり次第にやるっていうのか」

「そこらへんの車にでも設置すればいい」

 それだけで人々の不安や不審は増大し、抑えていた感情は爆発するだろう。

 緊迫し、情報を得られない環境では真実が解き明かされる前に争いが始まる。

 サヴィニオは自分の行動範囲を広げようとしている。

「あのくそやろう」

 あいつならやりかねない。

 低く、唸るようなつぶやきに怒りが見て取れてベリルは目を細めた。