「会社通してから請求してこい」

 ぶっきらぼうに1ドル紙幣を五枚手渡し、軽く手を上げ背を向けた。

「わかったよ」

 USBメモリをポケットに仕舞い遠ざかる泉の背中に手を上げて応える。
「ホントに勿体ないよな」

 ドルフはつぶやいて爽やかな青空を見上げる。

 しばらく公園を見回したあと、上司とのやり取りを想像しげんなりとして社に戻っていった。

 泉は自分の車に戻るべく、再び観光客の中をすり抜けていく。

 途中にある桜を眺めて先ほどのことをふと思い返した。

 実に残念だが、もう会う事はないだろう。

「桜が見せた幻覚だとでも思っておくさ」

 口惜しさを残しつつ駐車場に向かった。