桜下に見、往々にして炎舞

 ──結局、少しも手が出せないままベリルと別れて街中を歩き回る。

 気晴らしと暇つぶしに、アイスコーヒー片手に彷徨(うろ)いているという訳だ。

 モーテルでふて寝というのも、体がなまって仕方がない。

 都会の喧騒は止むことなく、人混みに煩わしさを感じながらもこれはこれで楽しんでいた。

 そのとき、バックポケットのスマートフォンが振動している事に気がつく。

 見るとベリルからのものだ。さっき会ったばかりだというのに一体どうしたのか。

「何かあったのか」

<ちょっとした情報が入ってきた>

「あん?」

<狙われているぞ>

 どういう事なのかと耳をそばだてて歩く速度を弱めた刹那、眼前を何かがかすめたと感じたと同時に右にある店のガラスに小さな穴が空いた。

 叫び声が響くなか、泉は空いた穴を見つめる。