【完】ある日、恋人を購入した。


「じゃあ、麻婆豆腐と…」

「尚叶くんは何が好きなの?」



あたしの好みを聞いてくれる尚叶くんに、あたしは気になってそう聞いてみた。

だって、あたしの好きなものが多いのも何か悪いし。

そしたら、尚叶くんが即答して言った。



「俺も麻婆豆腐が好き」

「!」



それだけを言って、チラリと正面から目が合う。

その瞬間に少し…ほんの少しだけドキッとして、だけどそのあとすぐに罪悪感が生まれた。


…何か、悪いことしちゃった気分…。



…………




そのあとは麻婆豆腐や小籠包、チンジャオロースを頼んで、お腹いっぱいでお店を出た。

お会計は「今度こそ」とあたしが出そうとしたのに、今回もまた「いいよ」と尚叶くんが払ってくれる。

…イタリアンレストランに行った時も、尚叶くんが奢ってくれたのに。

それじゃあ悪いよ。