だけど…財布を開いた途端、一気に眠気が吹き飛んだ。
財布の中に…二千円どころか、
二百円すら無いのだ。
…え、何で?は?
あたしは起きたての頭で一生懸命考えて、やっと思い出した。
…そっか。さっきデパートでコスメ買いまくって、全部使っちゃったんだ。
あー、お金下ろしてくんの忘れてたー。
あたしはそう思って財布を鞄の中に突っ込むと、斜め前に座っている若い男に声をかけた。
年はあたしと同じくらい?で、わりとイケメン。
さっきのうるさいオバサンもまだ乗ってるけど、なるべく話しかけたくないし。
「ねぇ、ちょっと」
「…」
「ねぇってば。おにーさんお金貸して?」
「…」
だけどそのおにーさんはあたしの声に反応せずに、ずっと窓の外を見ている。
でもやがてそれはイヤホンをしてるからだって気が付いて、あたしは半ば強引にそれを外した。
「ちょっと、シカトとか感じ悪いんじゃない?」

