【完】ある日、恋人を購入した。


だけど、そう思いながらもやっぱり車で送ってくれた方が断然ラクだし、傘よりも助かった。

だからあたしは「ありがとう」って呟くけど…尚叶くんは何も言わない。

その代わりに、車の中に表示されてある時計を見て、尚叶くんが言った。



「…どこか食べに行く?」

「え?」

「夕飯。まだ、19時前だし」



尚叶くんはそう言うと、車を走らせる。

その言葉を聞いて、意外すぎる誘いに思わずびっくりするあたし。


…そういうふうに誘ったりはしてくれるんだ。

そっか。今から一応恋人同士…だもんね。


あ、でも……。



「あたしは別にいいけど、尚叶くんは?いいの?」

「え、」

「だって、さっき店にいた時尚叶くんやたら時計ばっか見てたから。何か用事とかあるんじゃないの?」



あたしはそう問いかけると、その運転している横顔を覗き込む。

でもその表情は、目視のせいで背けられて…。



「…平気」

「そっか」



小さく、その言葉だけが聞こえた。


…そしてあたしはその時、尚叶くんの“重要なこと”には気づかない…。