「はい。…正面は、入れなくて」
「え、何で?何かあった?」
シュウさんはあたしの言葉にそう言うと、少し首を傾げる。
…あ、シュウさんは、尚叶くんが前にいること…知らないんだ。
あたしはそれに気が付くと、誤魔化すように言う。
「…でっかい犬がそこで遊んでたんです」
「え、」
「あたし、昔から犬…苦手なので。だから、」
入れませんでした。
あたしがそう言うと、シュウさんは「この辺にそんなでっかい犬いたっけ?」と考える。
…ほんとはそんなの、もちろんいないんだけどね。
だけどあたしはそれを笑顔で誤魔化して、言った。
「…ってか、あたしお風呂入ってきますね」
「ああ、うん」
そう言って、あたしはS.Shopの店内を出て二階に上がる。
シュウさんに用意してもらった自分の部屋に入ると、窓から下をそっと覗き込んだ。
ここから下を見れば、直にS.Shopの正面玄関が見えるのだ。
だから…
あたしがそこを覗くと、彼は…やっぱり居た。
…あたしがアズサに逢いに行く時は、まだいなかったのに。
あたしは尚叶くんから顔を背けると、お風呂に入る準備をした。

