あたしはそう思うと、携帯を鞄に仕舞いながら大声で言う。



「ちょっとー!運転手さーん、寒いんだけどー」

『…』

「もっと温度上げて貰えるー?」



あたしがそう言うと、運転手さんは何一つ返事をせずに左手でどこかを弄る。

温度を上げてくれているんだろうか。

あたしは深くため息を吐くと、椅子の背もたれに背中を預けた。


すると…



「ちょっと、そこのあなた」

「?」



あたしがもたれた途端に、目の前の席に座っている60代くらいのオバサンがあたしに言った。



「ここは他のお客さんもたくさん座っているバスよ。あなただけのものじゃないの。

皆が迷惑してるのわかるでしょう?」


「ハァ…うざ」

「う、うざって…。何て言葉を遣うんでしょ。親の顔が見たいわぁ」



オバサンはそう言うと、「信じられない」とでも言うようにまた顔を前に向ける。

…何て言葉って。“うざ”の意味知ってんのかよ。